大地の物語

第2回
「岩肌が語る大地の遺産 絶景!宝物の滞迫峡 過疎を支える故郷の渓谷」

■平成24年12月28日

地球活動の歴史である素晴らしい景観が続く滞迫峡(たいざこきょう)は、大分県豊後大野市緒方町の奥嶽川上中流にある。阿蘇山大噴火の火砕流の堆積を水が削ってできた渓谷は高さ10メートルから70メートル。火砕流が冷えて固まった溶結凝灰岩に、縦に亀裂がはいった柱状節理という地質遺産そのものの岩肌が約4.5キロメートルも続く。

滞迫峡を抱える緒方町長谷川地区の自治会長、三代泰司さん(62)は、両親の看病のため55歳で大阪府警を退職、帰郷した。土産は、府警時代に自費購入したマイクロバス1台。府警でヨットクラブをつくり、仲間を乗せるために買っていたもの。
たまに帰省はしていたが、37年ぶりにいざ、故郷に腰を落ち着けてみると、今さらに衰退ぶりが身にしみた。母校の小中学校は統廃合でなくなっていた。4軒あった雑貨屋も1軒、それもすぐに姿を消した。緒方町は豊後大野市内でも高齢化率が47.3%と一番高い。中でも三代さんが住む長谷川地区小原は61.2%と65歳以上が半分を超える。
「さびしくってね。みんなを元気づけようと、大阪時代の人脈で宝塚歌劇団などを呼んで緒方中学の講堂で公演したり、マイクロバスを使っての買い物お手伝いツアーを企画したり、いろいろ仕掛けている最中」と三代さん。
同地区は、祖母山系の尾平越え(峠)を通って宮崎県の高千穂町と一番近く、毎年交互にもみじ祭りを開いている。滞迫峡も高千穂峡も生まれは阿蘇山火砕流で兄弟のようなもの。紅葉も美しい。今年は高千穂で開催され、長谷川地区は新たに緒方音頭も披露した。
住民の買い物対策で、市と大分大学の連携で昨年から地域販売店も4回開いた。同大学経済学部の山浦陽一准教授(農業経済学)は「学生四、五十人といっしょに1回1週間程度。豆腐を作って無料配布したり、棚田のライトアップなどのイベントもしました」。
三代さんたち地元民も場所の提供などで参加。値段、商品の品数、仕入れ方法など、いろいろな問題点が浮かび上がったものの、先はまだよく見えない。
「課題は山ほど」と山浦准教授。「ジオパークも、地元の活性化、暮らしと結びついたものでなければ。観光客が増えても通過するだけでは意味がない。地質遺産という素晴らしい資源を生かした工夫が必要。奥嶽川上流にある水力発電所などいいヒントのきっかけになりませんか」と指摘する。
三代さんは「奥嶽会」というボランティアグループも立ち上げた。「28人、ほとんど高齢者ばかりなんですが、最後のひと踏ん張りをと張り切っていますよ」。

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